【短編】とある悪い日の話




どん、と誰かと肩がぶつかって。




「わ、すみませ、ん」




ぶつかった反動で落としたスマホを拾い、顔を上げて固まった。




「優希」




……と、見ず知らずの女の子。





細くて白い腕を優希の腕に絡めている様子からして明らかに友達ではなさそう。




「優希くん、知り合い?」




上目遣いで優希を見上げる姿は、女の私から見ても可愛いというか、あざといというか。




ていうか、どういうお知り合いか知りたいのはこっちなんですけど?




「いや、知らない」



「え」



「人違いとかじゃない?行こう」




そんな耳を疑いたくなるようなセリフを残して私の横を通り過ぎていく優希の背中。




え、ちょっと待て。




なに、これ。




人違いって、そんなわけあるか。





本当ならその首根っこを掴んで事情聴取するところだけど、あまりのことに体がついていかなくて。




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