愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
「そう、茜ちゃんと俺は、両親公認の許嫁なんだ。思い出したか? 茜ちゃんがまだ五歳の頃の話だから、覚えてないのも無理ないかもしれないが、俺がアメリカの高校に留学するって言った時、「必ず迎えに来て」ってわんわん泣いて――」

 五歳。私はそう言われて記憶の扉を勢いよくバタバタと開いていった。

 それは私がまだ小学生になる前の話だ。毎日のようにお偉い様方の会食などの予約でいっぱいになるくらい、当時のすず亭は景気の波に乗っていた。そんな中、親に連れられて必ず一ヶ月に一回顔を見せていた男の子がいた。

男の子、といってももう中学生くらいで、私から見たら立派なお兄ちゃんだった。友達もいない、兄弟もいなかった私とよく遊んでくれて、すず亭の庭園でかくれんぼなどして遊んだ記憶がじわじわと浮かび上がってくる。

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