愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
うわ、雨だ、最悪――。
仕事を終えて、エントランスを出ると外は大雨だった。今日の天気予報は降水確率0パーセントと言っていたから、それを信じて折りたたみ傘なんて持って来ていなかった。
仕方ない、オフィスで雨が止むの待つかな――。
そう思って踵を返した時だった。
ピカピカに磨かれた紅玉のような真っ赤なフェラーリが、滑るように回ってエントランス前でキッと止まった。
い、いったい――。
一台数千万はすると言われる高級車、成功者の証、キングオブスーパーカーの運転席から優雅に降りてきたのは……。
「鷹野部長……」
思わず見惚れて動けなくなっている私の目の前に、スタスタと鷹野部長が歩み寄ってきた。
「今帰りか?」
「そう、ですけど……」
ぽつぽつとタワービルのエントランスから出てくる会社員が、男女問わず憧れの眼差しでため息混じりに鷹野部長をチラチラ見ている。
すっごい目立つんですけど――!!
私に話しかけないで欲しい。むしろ無視して欲しい。他の人に顔を見られたくなくてバッグを抱きかかえて俯く私。
「こんな雨の中、帰るのは大変だろ? 俺が送ってやるから、家は麻布でいいんだよな?」
え!? 送っていく? いい! 結構です――。
心の中でそう言いながら、私は高速でぶんぶんと首を振った。
「大丈夫です、そんな送っていくなんて、迷惑ですから!」
「迷惑? 茜ちゃんは遠慮深いな、ここから麻布なんて、目と鼻の先だろ、いいから乗って」
「え? うわっ!」
否応なしに鷹野部長は、私の手を取って助手席に押し込んだ。
仕事を終えて、エントランスを出ると外は大雨だった。今日の天気予報は降水確率0パーセントと言っていたから、それを信じて折りたたみ傘なんて持って来ていなかった。
仕方ない、オフィスで雨が止むの待つかな――。
そう思って踵を返した時だった。
ピカピカに磨かれた紅玉のような真っ赤なフェラーリが、滑るように回ってエントランス前でキッと止まった。
い、いったい――。
一台数千万はすると言われる高級車、成功者の証、キングオブスーパーカーの運転席から優雅に降りてきたのは……。
「鷹野部長……」
思わず見惚れて動けなくなっている私の目の前に、スタスタと鷹野部長が歩み寄ってきた。
「今帰りか?」
「そう、ですけど……」
ぽつぽつとタワービルのエントランスから出てくる会社員が、男女問わず憧れの眼差しでため息混じりに鷹野部長をチラチラ見ている。
すっごい目立つんですけど――!!
私に話しかけないで欲しい。むしろ無視して欲しい。他の人に顔を見られたくなくてバッグを抱きかかえて俯く私。
「こんな雨の中、帰るのは大変だろ? 俺が送ってやるから、家は麻布でいいんだよな?」
え!? 送っていく? いい! 結構です――。
心の中でそう言いながら、私は高速でぶんぶんと首を振った。
「大丈夫です、そんな送っていくなんて、迷惑ですから!」
「迷惑? 茜ちゃんは遠慮深いな、ここから麻布なんて、目と鼻の先だろ、いいから乗って」
「え? うわっ!」
否応なしに鷹野部長は、私の手を取って助手席に押し込んだ。