愛しの許嫁～御曹司の花嫁になります～

くちづけは潮騒の味

　それから数日後。

「鈴本さん、この書類に沿ってデータを作ってくれる？」

「わかりました」

　鷹野部長の許嫁が水菜さんだったと知ってから、やっぱり何かの間違いだったんだ。と、私はすべてを吹っ切るように仕事に打ち込んだ。

「鈴本さん、あまり無理しないでね？　なんだか疲れてるんじゃないかなって、そう感じる時があるの」

　隣に座る水菜さんの綺麗な黒髪が肩から雪崩ると、美人な顔が心配そうに私を見た。

「そんなことないですよ、新人なんだから身体に鞭打って頑張らないと……。あ、じゃあこのデータ作るのにちょっと資料室に行ってきます」

　そう言って、私は水菜さんににこっと笑うと、席を立って資料室へ向かった。