小さな恋物語
「何で?何でいるのよ!?」

もう訳が分からなくて。

だって、他の女の子とのデートを優先すると思ってたのに、私との約束を守ってるんだもん。

しかも、30分以上前から待ってるなんて。

「マナこそ、何でこんなに早く来るんだよ〜。まだセリフ考えてないのにぃ……」

「アンタ、今日はデートに誘われてるんでしょ?何でここにいるのよ!」

「あぁ、それなら断ったよ。マナと会う約束が何よりも大切でしょ?」

何よ、空気みたいな存在だって言ったくせに。

「マナ、誕生日おめでとう!」

「え?」

「嫌だなぁ、自分の誕生日を忘れてたの?」

健太郎に言われて、初めて思い出した。

今日は私の誕生日だ。

「……マナ!」

突然、健太郎は私ね両手を握った。

そして、真剣な表情で私を見つめる。

そんなに見つめられたら、ドキドキして心臓が破裂しちゃうよ。

「な、なな何よっ」

「あの〜……えっと……カッコイイかんじのセリフが思い浮かばなかったから、カッコ悪い言い方になるかもしれないけど……これ、あげる!」

健太郎が私に差し出したものは、小さな箱だった。

でも、これがただの箱じゃないってことは、女なら誰でも分かる。

紛れもなく、これは指輪が入っている箱だ。

「……渡す相手、間違ってるんじゃない?」

「間違ってなんかない。俺は本気だよ」

「……まさか、指輪を買うために工事現場でバイトしてたの!?」

「バレてたんだ〜。何か恥ずかしいな……谷崎マナさん、僕には金も力もないけれど、アナタを愛する気持ちは誰にも負けません!僕と結婚して下さいっ」

こんな未来、誰が想像できた?

親にも、近所の人にもできなかったことだよね。

もちろん、私だってできなかった。

でも、今は違う。

アナタを愛していると気付けた今なら、私たちの将来がありありと想像できるの。

「はいっ」


今日のチーズケーキは、昨日よりも甘く感じる。

大好きな君の隣だからかな。
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