小さな恋物語
『次は〜……』

車内アナウンスで、私達が降りるべき停留所の名前が流れる。そして、間もなくしてバスが停車し、ドアが開いた。

「先生、先に降りて下さい。女子生徒と一緒にいるところを見られるのは、嫌でしょう?」

本当なら、一緒に行きたいけど、それを無理矢理に遂行してはダメだ。私は男に媚びない女を装う女。ここで誘惑に流されては、1ヶ月の努力が無駄になる。私は、確実に他の女子よりも好かれている。これは自惚れなんかではなくて、心からそう感じる。彼が自分から話をふったりするのは、私だけだから。

「じゃあ、お先に」

「じゃあ、授業までさようなら」

私は彼より5人分の間を空けて下車した。すぐに前を見たけど、彼の姿はもうなかった。せめて後ろ姿を見ながら登校しようて思っていたけど、叶わずに終わってしまった。
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