眠り姫の憂鬱

「本日付で配属になった雨宮さんです。
始めは遠藤君のアシスタントとして仕事を始めてもらいます。
副社長の婚約者なのは皆、知っていると思いますが、
仕事に関しては普通の新人として扱うよう、お願いします。」と室長兼、社長秘書の中野さんが朝のミーティングで話して、仕事が始まった。

副室長の宮崎さん（50代のベテラン。女性）に会議室で心構えや、細かく指導をうけながら、仕事を始めた。

「長く勤めているので、大抵の事は判断できます。
わからないない事は直ぐに確認してください。」と柔らかく微笑んでくれる。
お母さんみたいに面倒見が良いみたいだ。

私が作業を始めると、
「丁寧で真面目ね。」と直ぐに私の顔をみる。

「…」直ぐにそんな風に言われても…と驚くと、

「新人の教育ってそれこそ、何十人も見てるから、それくらいわかります。
将吾さんの事も小さい頃から知っているの。将吾さんのお母さんは秘書課にいたから。
私は後輩で、今でも家族ぐるみのお付き合いをしているの。」と少し笑った。

「…そうなんですね。この間、ご両親にお会いしました。」と言うと、

「昨日、電話があってね。
きっと、社長に反対されているって思ってるかもしれないから、
フォローしておいてね。って言われたわ。
きっとね、社長は将吾さんがなんの相談もなく結婚を決めたので、拗ねているだけよ。」と私に微笑みかける。

「ご両親が反対なさる気持ちもわからます。
私はショウゴさんの事も自分の両親の事も覚えていません。
さっき同僚に会っても…やはりわかりませんでした。
…私は…このままショウゴさんに甘えていいのでしょうか？」