眠り姫の憂鬱
「おはようございます。雨宮さん。」

と言う声に目が覚めると、
規則的な機械音が聞こえ、
クリーム色の天井が見えた。

…違う部屋。

「おはようございます」という、『お母さん』の声が部屋の中から聞こえる。

…付き添ってくれているんだな…


白衣の看護師さんらしい人が明るい笑顔で
窓際の深いグリーンのカーテンがシャーっと音を立てて開いている。
レースのカーテンから柔らかい日差しが入ってくる。
…朝なんだろう。

「…おはようございます。」と私が声を出すと、

「美月、起きたのね。よかった。」とお母さんが私の側に駆け寄って、私の手を握り微笑みかけてくれる。

この部屋には私のベッドしかない…
首を回すと、ソファーセットに大きなテレビ、簡易ベッド、冷蔵庫も…
贅沢な個室のようだ。

看護師さんが、私の血圧を測ったり、体温を測っている。

「雨宮さん、昨日一般病棟に移ったんですよ。今日は少し起きていられるかな?体調が良ければ、少し、ベッドを起こしましょうか?」と看護師さんが私に聞くので、

「はい。お願いします。」と言うと、ゆっくりベッドの背中が持ち上がる。

「気分が悪くなったら、また、横になりましょう。いつでも呼んでください。」と看護師さんは『お母さん』にも微笑んで部屋を出て行った。
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