眠り姫の憂鬱
そうっと頬に触れる感触で、また、目が醒める。

この手はショウゴさんの手だ。
ちゃんと覚えている。

私が目を開くと、間近で見つめる瞳と目が合った。

「…ヒャッ」と私の口から可笑しな音が出る。


ショウゴさんはクスクス笑って

「ゴメン、驚いたよね。
でも、ミツキの瞳が見たくって起こしたくなっちゃった。
今までは目を閉じている美月にしか会えなかったから…」
と嬉しそうに微笑んで、私の顔を覗き込んだまま、また、私の頬を指で撫でている。

「…今日は午前中の検査の間も起きていられました。」と顔を赤くして言うと、

「そう、少しずつ、起きていられるといいね。…美月…恥ずかしいの?」と私の瞳に笑いかける。

「だ、だって…ものすごく顔が近くって…」

「俺達、恋人なんだからいいだろ…今までも、こうやって美月に話しかけてた。」と微笑む。

「そっ、そうですか…」と言うと、ショウゴさんの後ろで、「副社長、そろそろ…」と言う声がする。


「うん。あとね…」と私の唇にそっと唇を付け、

「眠っているお姫様はたいてい王子のキスで眼が覚めるから、俺もキスをしてから帰ったんだ。このお姫様は頑固で、何度もキスしちゃったけどね。…もう、行かなくちゃ。仕事が残ってる。
また、夜来るよ。…寝てたら、また起こしてもいいかな?」と、微笑んで立ち上がった。

「…はい。」と私は顔を真っ赤にして、返事をした。


…普通にキスするんだ。

本当に恋人なんだね。…結婚するつもりだったって言ってたかな?

ショウゴさんがいなくなったのを確認し、
私は恥ずかしくなって顔を両手で覆った。

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