眠り姫の憂鬱
毎日、仕事の合間や帰りにやってくるショウゴさんは私の顔を覗き込んでうれしそうに微笑み、私の様子を確認してからそっと唇を合わせて帰った。(母はショウゴさんをが来ると、気を使って病室をでて、売店などに行ってしまう。)


週末。
夜遅くやって来たショウゴさんは、1度家に帰ったらしく、
スーツ姿ではなくて、髪も整髪料が付いていないようで、カジュアルな感じだ。
明日は土曜日で、休む事にしたから、僕が付き添います。ゆっくりしてください。と『お母さん』にホテルの部屋を取ってタクシーでに帰してしまった。


朝までふたりきりだ。

どうしたら良いのかわからない。
目を逸らして天井を見つめてみる。

ショウゴさんはベッドの横にある椅子に座り、私の手を握る。


「美月、俺の事は覚えていないんだろうけど…俺って嫌いなタイプかな?」

「そっ、そんな事は…
ショウゴさんは素敵な方だと思います。
覚えていなくても…私を大切にしてくれているのは…わかります。
『お母さん』も…ショウゴさんは毎日お仕事が忙しい様子なのに
毎日…2度も3度も来てくれて、話しかけたり、髪や、頬を撫でてくれたって…
恋人でなければ…きっとこんな風にそばにいないだろうし…」と言うと、


「うん、俺は忙しくて、長く付き添えないから…
外に出るときは短い時間でも、顔を出すように心がけてた。
まあ、美月に会いたかっただけだよ。
ここに来れば必ず美月がいたからね。」とそっと頬を撫でる。




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