【短】愛の病


『しんじょーから貰えるものなら、なんでも嬉しい』


って、皆には聞こえないくらいの声であたしの耳元に囁いて。

あやちゃんは、あたしの手をきゅうっと握ってくる。
慌てて離そうとしたんだけど、その前に…。


「…岡田と新條…。授業中だって、知っててやってるのか?」


数学の教師にそう泣かれたから、大人しく前を向くことにする。

でも、あやちゃんは先生が前を向くとまたあたしの手を握ってきて…。


だけど、今度はその手を払い除けるなんてどうしてもしたくなくて、あたしは机をくっつけてから手を下ろして、あやちゃんの膝の上に置いた。

で、教科書の端に走り書きをする。


『これだったら、ずっと繋いでてもいいでしょ?』


それを読んだ途端、またきゅうっと手を握られてトクンと胸が鳴ったような気がする。


真っ赤なままの顔をこれ以上見せられなくて、あたしは意味の分からない数式の並んだ黒板を見つめることにした。

< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop