【短】愛の病
『あやちゃんに『あたし専用』って書いたヤツを下げてやろうか』
なんて、バカみたいなことを考えてしまう。
…でも、ほんとあたしだけのものだって宣言出来れば、こんな気持ちになんなくても済むんじゃないかって思った。
「しーんじょ?さっきから黙ったまんまだけど、どったの?」
屋上に着くなり、パッと手を離してフェンスの方に歩き出したあたしの背中へと、あやちゃんはのほほんとした声で聞いてくる。
その全然緊迫してないトーンに思わず曝け出してしまおうかとも思ったけど…。
口を開き掛けて、それは叶わないまま終わった。