今から一つ嘘をつくけど
 早く上がれたけど、姉との待ち合わせは六時。まだ時間があるので、待ち合わせ場所の側のカフェで時間を潰す事にした。

 カフェでは通りの見える窓際へ。ここなら姉が来るのが見える。席に座ると、コーヒーを頼んだ。


 姉の優樹(ゆうき)とは六歳も年が離れている。今は別々に暮らしていて、会うのは三ヶ月ぶりだ。武田店長には姉との食事が面倒だとか言ったけど、別に仲が悪い訳じゃない。むしろ私たちは二人で助け合って生きてきた。

 私たちの両親は、私が十六歳、高校一年の時に交通事故で亡くなった。たまたま二人で出かけた時に、信号を無視したトラックに突っ込まれ、即死だった。

 残された私たち姉妹は、別々の親戚に引き取られる事になっていた。私はまだ高校一年、姉は大学生。お金のかかる時期で、引き取ってくれる親戚にも負担が大きい。離れ離れになるのは仕方のない事だった。

 だけどその時、姉が言ってくれたのだ。


『私たちは二人で大丈夫です。私が大学を辞めて働いて、晃と一緒に暮らします』


 両親を一度に亡くし、姉とも離れ一人になる事に不安を感じていた私は、その姉の言葉が本当に嬉しかった。

 幸運な事に、事故の裁判でお世話になった弁護士の遠野(とおの)先生がとてもいい人で。私たち姉妹の状況を知り、後見人をかって出てくれた。

 それからは、二人で力を合わせて生きている。


 今は私も就職し、移動の多い職種なので姉とは離れて暮らしているが。

 大学を中退し私の為に働いてくれた姉には、感謝してもしきれない。だから姉には幸せになって欲しいと思っている。

 本当に、心から……




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