今から一つ嘘をつくけど
トプン、といきなり冷たい水の中に落ちてしまったように感じた。急に息苦しくなる。空気を吸おうと口を開けるが、入って来るのは水ばかり。
吐き出す事も出来ない、吸う事も出来ない。
苦しい……
「お……おめでとう……! 何か……凄い、びっくりしちゃった! おめでとう、お姉ちゃん、晴夏さん……」
やっとの思いで何とかお祝いの言葉を絞り出した。だけど、お水のグラスを手に取ると水が小刻みに震えてしまう。
私は、ずっとずっと前から……
晴夏さんが好きだった。
でも、姉も彼を好きだと気が付いて、何も言えなくなってしまった。私と二人で暮らす為にずっと自分を犠牲にしている姉には、絶対に幸せになって欲しいと思っていたから。
姉の恋を邪魔する事なんて、私には出来なかった。
そのうちに晴夏さんも姉が好きなのだと気が付き、そして二人は想いが重なり付き合い始めた。
私はもうとっくに、失恋していたのだ。
でも好きだった気持ちはそう簡単には無くならない。自分でも嫌になるくらい、ずるずると片思いを引きずって。だから、晴夏さんと会うのは嬉しくて、でも辛かった。
お姉ちゃんさえいなければ……時々そんな風に思ってしまう自分が、嫌でたまらなくて。最近は晴夏さんとも姉とも、少し距離を取っていたんだ。
でもいつか、こんな日が来るとは分かっていた……
「遠野先生には今週末に二人で報告する予定なの。きっと、驚くと思うけど……」
「大丈夫、父さんは諸手を挙げて喜ぶと思うよ。父さんも優樹の事が大好きだから」
私は二人の幸せそうな話を、心とは裏腹に笑顔を張り付け聞いていた。自分の心臓の音が耳に響いていて、ほとんどは聞き流してしまったが。
吐き出す事も出来ない、吸う事も出来ない。
苦しい……
「お……おめでとう……! 何か……凄い、びっくりしちゃった! おめでとう、お姉ちゃん、晴夏さん……」
やっとの思いで何とかお祝いの言葉を絞り出した。だけど、お水のグラスを手に取ると水が小刻みに震えてしまう。
私は、ずっとずっと前から……
晴夏さんが好きだった。
でも、姉も彼を好きだと気が付いて、何も言えなくなってしまった。私と二人で暮らす為にずっと自分を犠牲にしている姉には、絶対に幸せになって欲しいと思っていたから。
姉の恋を邪魔する事なんて、私には出来なかった。
そのうちに晴夏さんも姉が好きなのだと気が付き、そして二人は想いが重なり付き合い始めた。
私はもうとっくに、失恋していたのだ。
でも好きだった気持ちはそう簡単には無くならない。自分でも嫌になるくらい、ずるずると片思いを引きずって。だから、晴夏さんと会うのは嬉しくて、でも辛かった。
お姉ちゃんさえいなければ……時々そんな風に思ってしまう自分が、嫌でたまらなくて。最近は晴夏さんとも姉とも、少し距離を取っていたんだ。
でもいつか、こんな日が来るとは分かっていた……
「遠野先生には今週末に二人で報告する予定なの。きっと、驚くと思うけど……」
「大丈夫、父さんは諸手を挙げて喜ぶと思うよ。父さんも優樹の事が大好きだから」
私は二人の幸せそうな話を、心とは裏腹に笑顔を張り付け聞いていた。自分の心臓の音が耳に響いていて、ほとんどは聞き流してしまったが。