今から一つ嘘をつくけど

 こんな時間になんだろう? まさか、海莉ちゃんから昨夜の事を聞いたんだろうか。

 そんな事を考えてしまい、少しドキドキしていると、武田店長が言った。


『あのねどうやら私、シフトスケジュール間違えちゃったみたいで……今日、晃ちゃんお休みでいいわよ』

「え? そうなんですか?」

『ええ、急で申し訳ないんだけど。商品発注とかは私がフォローしておくから。他に何かある?』

「たぶん、何も無いと思います。大丈夫です」

『そう、じゃあ休暇を楽しんで。本当に急でごめんね』

「いえ、逆に有難いです」


 思わずそう言ってしまい、電話なのにハッとして口を押えてしまった。武田店長が『え?』って聞き返してきちゃったけど、適当に誤魔化して早々に携帯を切った。


 ぽっかりと、空いてしまった一日。ホッとしたような、そうでないような。

 でもこれで今日一日は諏訪さんに会わないで済む。先伸ばしになっただけだけど。


「――――あー! もうっ!」


 グチグチ悩んでいる自分に嫌気がさして、部屋で一人大声を出した。

 悩んでも無駄だ! むだっ!

 諏訪さんの考えなんて分かるわけないし。そもそもあの人は変な人だし!

 部屋で一人で考えてても、何も解決はしないんだ。


 私はさっきから持っている携帯で姉にメールを打って送った。せっかく休みになったから、ランチでも一緒に食べようと思ったのだ。

 無理矢理にでも出掛ければ、きっと何も考えないで済む。




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