天使の傷跡
「おーおー、今日も餌付けしてもらってんのかぁ?」
呆れ笑いを浮かべてひょこっと向かいの席から顔を出したのは、営業部期待の若手と言われている徳松さん。確か私より三つ年上だったような。
「餌付けって…違いますよ!」
「じゃあなんなんだよ?」
「う…それは…寵愛…とか?」
それ以外に浮かばずとりあえず出た言葉に、ブハッと盛大に吹き出された。
「寵愛って、お前自分で言うか?」
「いっ、いいんです! 小倉さんに可愛がっていただいてるのは事実なんですから!」
必死の反論など右から左に流してククッと肩を揺らす徳松さんに、カーッと自分の顔が熱くなっていくのがわかる。
さすがに寵愛は言い過ぎだったな。
我ながら恥ずかしい。
「まぁ水谷は食ってるときが一番幸せそうだもんなぁ~」
「い、いいじゃないですか、別に…」
だって実際幸せなんだもん!
っていうかいつまで笑ってるんですか!