天使の傷跡
思いもよらないプロポーズ
「これでよし…っと」
掃除機をかけ終えてふぅっと額に滲んだ汗を拭うと、ベッドに寄り掛かって脇にある棚から読みかけの小説を取り出した。
週末は午前中にやるべきことを済ませて後は大好きな読書に耽る。
それが地味道をひた走る私の至福のひとときだ。
食事をすることすら忘れてひたすらに物語の世界へと浸ってしまうのも珍しくない。
…のだけど…
「………あー、もうっ! 全っ然集中できないよ…!」
思わず出てしまった特大の溜め息と共にボフッと後頭部をベッドに投げ出す。
あんなに続きが気になって仕方なかったはずの推理小説が、読めども読めどもちっとも頭に入ってきてくれない。
今日はいよいよ真犯人がわかるかというクライマックス部分だというのに!
「それもこれも全部課長のせいだ…!」
う゛ーっと恨めしげに唸ると、そのまま勢いよくベッドにダイブした。
俯せになってゴロゴロと右に左に転がり回る。
「ほんとに、なんであんなこと…」