天使の傷跡
『 俺と結婚してくれないか 』
あれを青天の霹靂と言わずしてなんと言おう。
あまりにもいきなりすぎて、今でも夢だったのではないかと思う。
…いや、本当に夢だったんじゃないの?
だって、あんなことが起こりうるはずがないもの。
結婚どころかお付き合いすらしていないのに、どうして結婚云々の話になるというのか。しかもあんな、雰囲気もへったくれもない朝のオフィスで。
おまけにしぐれ煮のおにぎりを食べながらなんて。
…うん。きっとあれは夢だったんだ。そうに違いない。
誰が何と言おうとそういうことにしてしまおう。
だって、課長はあのことがまるで嘘のように普通にしてたもの。
もしあれが現実なら、少しはいつもと態度が違ってもおかしくないでしょう?
それなのに、見事なまでにいつもと変わらない様子だった。
プロポーズされたのは私のはずなのに、意識しているのが私だけみたいな状況になっていて、いたたまれないったらなかった。
「もう、お願いだから頭の中から消えてよ…!」