飛べない鳥に、口づけを。




「菜緒ちゃん?」




樹君に名前を呼ばれ、はっと我に返った。




あたしの馬鹿。

変態のうえに、なに樹君に見惚れていたのだろう。

これじゃただの変態ではなく、ド変態だ!




心の中で自分に突っ込むあたしに、相変わらず笑顔の樹君は告げる。




「菜緒ちゃんといると、元気が出るよ」




その眩しい笑顔に、優しい言葉に、胸がかき乱されて止まない。




あぁ、いつの間にかこんなにも樹君に惚れていたんだ。

樹君しか見えなくなっていたんだ。

今日の試合を観ても思った、樹君はあたしの手の届かないほど凄い人だけど……

あたしの気持ちも本物だ。

樹君が好きだ。


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