飛べない鳥に、口づけを。





樹君は軽く伸びをして、松葉杖をついて立ち上がる。

その足元がふらつきバランスを崩した樹君を……あたしは抱きとめていた。



カラーン……



地面に転がる松葉杖の音がやたら大きく響く。

その中で、心臓が止まりそうになりながら、全身で火を噴きながら、樹君の身体に手を回していた。




細身に見えるのに、立派に筋肉がついている。

かすかに甘い香りがする。

男の人って、こんなものなんだ。

こんなに硬くて、力強くて……そして愛しくて、切なくて、頭の中をめちゃくちゃにするものなんだ。


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