飛べない鳥に、口づけを。
どれだけ抱きしめ合っていたのだろう。
「うわー……あつーい」
冷やかしのような声が聞こえ、樹君は慌ててあたしの身体を離した。
次にふらついたのは、身体中の血が沸騰しそうなあたしだ。
地面に崩れ落ちそうになるのを必死で我慢し、体勢を整える。
そんなあたしを見た樹君は、心なしか頰が赤かった。
その顔も一瞬で、次の瞬間にはいつもの笑みを浮かべている。
「ありがとう、菜緒ちゃん。助かったよ」
あたしは全然助かっていない。
「きっと明日ギプスも変わるし、松葉杖も終わりかも。
最後の最後に菜緒ちゃんに甘えちゃった」
最後なんて言わないで欲しい。
あたしはもっと……樹君に触れたい。
もっと抱きしめて欲しい。
もっと樹君を味わいたいんだ。