飛べない鳥に、口づけを。
「菜緒ちゃんが一緒に食事をしたいって?珍しいね」
そんなことを言いながら、樹君は初めてのあたしからのお誘いを快諾してくれた。
今までは受け身だったあたし。
自分から樹君を誘うことなんて出来ず、ただひたすら胸を焦がしてお誘いを待っていた。
だけど、もっと早くから誘っていれば良かった。
優しい樹君は嫌な顔一つせず、あたしに付き合ってくれる。
だけど……この優しさも、「友達」に対する優しさだ。
きっと、あたしがデートのお誘いをしていても、樹君の気持ちは動かなかっただろう。
だって、「あたしには手に負えない相手」だから。