飛べない鳥に、口づけを。
必死に涙を我慢して笑顔を作る。
そして、樹君に告げた。
「樹君、今までありがとう」
樹君のおかげで仕事も頑張れた。
樹君のおかげで、イケメンとも話が出来るようになった。
樹君のおかげで、矢沢さんや南さんとも仲良くなれた。
あたしはこうも樹君に恩をもらっていたのだ。
それなのに、あたしは何も出来ずにごめんね。
最後まで、ヘタレな女でごめんね。
本当に……ありがとう。
「菜緒ちゃん!?」
食事代を机の上に置き、その場を去るあたしの耳に、樹君の声が飛び込んでくる。
その声を聞いて、とうとう頰を涙が溢れ落ちていた。
樹君……
あたしはあなたが、本当に大好きでした。