飛べない鳥に、口づけを。




「今、業務中なので」




ぴしゃりと言い放って去ろうとしたあたしに、戸崎柊は爆弾を落とした。




「じゃ、仕事後に待ってる」



「は!?」



「ただ、俺は既婚者だ。

アンタと二人で怪しいことをしているなんて妻に思われたら、俺は死にそうだ。

だから、あの薬局長でも連れてこい」





訳が分からない。

そしてなぜ命令口調なのか。

矢沢さんを連れていかないといけないなんて、地獄だ。

それに、矢沢さんだって暇ではないだろう。




だけど……

戸崎柊は既婚者なのだと思い知る。

そして、意外にも奥さんを大切にしているのか。

なんだか羨ましく思った。

あたしも、一度でいいから男の人に大切にされてみたい。



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