飛べない鳥に、口づけを。
「樹もなかなかよくならないんですよ。
あと一歩なんだけど、その踏ん張りが出来ねぇっつーか。
どっちかっつーと、メンタルが関係している気がする」
そう言って戸崎柊は意味深な瞳であたしを見る。
アーモンド型の綺麗な瞳に見つめられ、またまたイケメンアレルギーが発症しそうになった。
だけど、それをぐっと我慢する。
「九月には、もう歩けていましたが?」
戸崎柊に喧嘩を売るように言ったあたしを見て、彼は大きなため息をついた。
そして話を始める。
「歩けても、走れても、サッカーに復帰出来るとは限らねぇんだよ。
九十分のサッカーは、予想以上に足に大きな負荷がかかる。
それに、樹がやっちまった靭帯の損傷って、マジで選手生命に影響する。
それで引退した奴なんてたくさんいるし、復帰してもプレースタイルを変えないといけないかもしれねぇ。
実際、俺たちの仲間でも、樹のことを諦めてる奴はたくさんいる」