飛べない鳥に、口づけを。





そうなんだ。

樹君の怪我はそんなに酷いものだったんだ。

全治六ヶ月と聞いて、六ヶ月後には必ず復帰出来るものだと信じていた。

そして、少しずつ良くなる樹君を見て、再びピッチに立てると思っていたのだ。




樹君はいつでも前向きで明るかった。

だけど、自分自身の置かれた状況を、きっと誰よりも理解していただろう。

楽しそうにサッカー観戦をしていた樹君は、仲間の勇姿を見て何を思うのだろう。

そんなこと、ぬくぬくと暮らしてきたあたしには、分かるはずもない。


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