飛べない鳥に、口づけを。




「でも、俺はまだ樹を応援したいんだ。

俺はユース時代からあいつと一緒にやってきた。

樹が引退とか、信じられねぇ」




この人が苦手なのに、その言葉はあたしの胸に染み込む。

チャラくて馴れ馴れしくて嫌な男だけど、友達思いでいい人なのかもしれない。




だけど……あたしは戸崎柊に聞いていた。




「樹君の状況は分かりましたが、あたしに何が出来るっていうんですか?」





彼女がいるなら、彼女に癒してもらえばいい。

だってあたしは、ただの友達だったから。

ただの友達でいいなんて思っていたが、樹君に彼女がいると分かった瞬間、虚しくて寂しくて、そして嫉妬でいっぱいになった。

だからあたしは、樹君と連絡を絶ったのだ。


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