飛べない鳥に、口づけを。





戸崎柊はあたしを見て、大きなため息をつく。

そして、分かってないなぁと呟く。

分かってないのは戸崎柊のほうだ。

顔を歪めるあたしに、彼は告げた。





「樹はアンタを精神的支えにしていたようだ。

だけど、アンタがいなくなって、あいつはやる気をなくしている」



「……え?」



「今じゃ引退後、どんな仕事をしようなんて言う始末だ」



「引退……」





樹君が引退とか、ありえない。

あたしは、また樹君のプレーを見られることを楽しみしていたのに。

だけど、あたしが精神的支え……?

訳が分からない。

そう思ったのは、矢沢さんも同じようで、



「でも、小沢選手、彼女いるんですよね?」



戸崎柊に聞いていた。


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