飛べない鳥に、口づけを。
菜緒ちゃんは優しい女性だった。
初めて会った時、松葉杖の俺のことをすごく気にかけてくれた。
俺だけではない。
ばあちゃんのことも大切にしてくれて、親身になってばあちゃんの話を聞いてくれていた。
そして、サッカーなんて興味もないはずなのに、俺のためにサッカーの勉強をしてくれた。
そんな菜緒ちゃんといると心が安らぐし、俺も頑張らなきゃと思った。
もちろん、サッカーが好きだから選手として復帰したい。
だけど、応援してくれる菜緒ちゃんのためにも復帰しなければと思った。
目を輝かせてサッカー観戦をする菜緒ちゃん。
あの瞳が俺に向けられたら、俺はまた頑張れそうな気がした。