飛べない鳥に、口づけを。
「樹さぁ、彼女はどうしたんだ?」
不意に告げられた柊の言葉に、
「別れたよ」
ぽつりと言う。
柊の言う彼女とは、数ヶ月付き合ったカナエという女性だ。
アナウンサーの彼女とは、アスールの取材で知り合って交際を始めた。
俺のことを大切にしてくれる彼女だと思った。
だけど……大怪我をした瞬間に、カナエは言った。
「今年は出られないんだよね?
てか、もう引退かもしれないんだよね?」
頷く俺を、カナエは冷めた目で見る。
「じゃあ、あたしは樹とは別れる。
将来性のないサッカー選手なんて、無理だから。
それに、樹と結婚したら、あのお祖母さんの介護もしないといけないでしょ?
そういうの、嫌だから」