飛べない鳥に、口づけを。






柊は切なげな顔で俺を見た。

柊のこんな顔、見たことがなかった。

そして彼は、静かに告げる。




「好きだからこそ離れていく女もいる。

俺だって、すげぇ好き合ってる女に、五年間も存在無視された」





それが今の柊の奥さんだ。

柊は悲恋の末見事結婚を果たしたが、それは奇跡としか言えない。

そして、俺に奇跡が起こるとは限らない。

だけど、その奇跡にかけてみたいと思った。

菜緒ちゃんがいたら、何だって出来る気がするんだ。


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