飛べない鳥に、口づけを。
気付いたら、すっかり陽は落ちていた。
アスールのサポーターの姿もなく、残っているのはベンチに座るあたしと樹君だけだった。
いつの間にか冬がそこまでやってきていた。
もうすぐ街はクリスマス一色になり、Jリーグも閉幕する。
樹君と出会った時は夏だったのに、時間が経つ速さに驚いていた。
そして長い間、樹君に不安で寂しい思いをさせたことを思い知る。
自分に自信がなかった。
樹君みたいな素敵な人が、あたしなんかを好きになるはずがないと思っていた。
だけど樹君はあたしだけを見てくれていたのだ。