飛べない鳥に、口づけを。
時間はあっという間に過ぎ、選手入場の時間になる。
見慣れた青いユニフォームに身を包んだ選手たちが入場し……
小沢コールが起こる。
遠くてその表情までは見えない。
だが、そこにいるのは確かに樹君だった。
背を伸ばし、さらさらの髪を風になびかせ、堂々とピッチを歩く樹君。
サポーターの大歓声に包まれて。
スクリーンに樹君の顔が映し出される。
あたしの大好きな樹君は、いつもの明るい笑み……いや、いつも以上に明るい表情でまっすぐ前を見ている。
そして、例外なく心が踊った。
樹君と付き合っているなんて、いまだに信じられない。
こうやってピッチに立って歓声を浴びる樹君は、予想以上に凄い人だと思い知る。
そんな凄い樹君だけど、恋愛初心者のあたしを選んでくれた。
それはまぎれもない事実だ。