飛べない鳥に、口づけを。








時間はあっという間に過ぎ、選手入場の時間になる。

見慣れた青いユニフォームに身を包んだ選手たちが入場し……

小沢コールが起こる。

遠くてその表情までは見えない。

だが、そこにいるのは確かに樹君だった。




背を伸ばし、さらさらの髪を風になびかせ、堂々とピッチを歩く樹君。

サポーターの大歓声に包まれて。





スクリーンに樹君の顔が映し出される。

あたしの大好きな樹君は、いつもの明るい笑み……いや、いつも以上に明るい表情でまっすぐ前を見ている。

そして、例外なく心が踊った。




樹君と付き合っているなんて、いまだに信じられない。

こうやってピッチに立って歓声を浴びる樹君は、予想以上に凄い人だと思い知る。

そんな凄い樹君だけど、恋愛初心者のあたしを選んでくれた。

それはまぎれもない事実だ。


< 216 / 252 >

この作品をシェア

pagetop