飛べない鳥に、口づけを。
試合開始のホイッスルが鳴り、白いボールが宙を舞った。
FW黒木がドリブルで駆け抜けようとするが、惜しくも相手に取られてしまう。
そのまま相手はパスを繋げるが……
「小沢ぁぁあ!!」
サポーターの叫びとともに、樹君は見事にパスをカットする。
全力で走り、負傷した左足を軸に、右足でボールを蹴る。
樹君の蹴ったボールは大きな円を描き、ゆっくりと前方に飛んでいった。
スタジアムが一斉に沸く。
あたしも、大声で樹君の名を叫んでいた。