飛べない鳥に、口づけを。




防御から攻撃に転じたアスールは、前方の選手を中心に果敢に攻める。

そして樹君も、攻撃に参加する。

正確なパスと着実なドリブルに、衰えることのないスタミナと運動量に舌を巻く。

ボールを受け取った樹君は、前方の空いた空間にクロスを出す。

そこへ戸崎柊が走り込み、強烈なシュートが打ち込まれた。




スタジアムが歓声で包まれる。

戸崎柊とハイタッチを交わす樹君から目が離せない。

もちろんシュートを決めた戸崎柊が目立ってしまうが、



「小沢、さすがだな」



「すげー、小沢!!」



聞こえてくるその言葉ににやついてしまう。




やっぱり樹君は凄い。

鮮やかなアシストだった。

そして、始終明るい表情でサッカーをしている。

ようやく仲間のもとに戻れたことが嬉しくて、大好きなサッカーが出来ることが嬉しくて。

そんな思いがひしひしと伝わってきた。



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