飛べない鳥に、口づけを。
あたしを抱きしめたまま、樹君は耳元で囁く。
「菜緒ちゃん。約束、覚えてるよね?」
その言葉に、頭の先からつま先まで真っ赤になる。
そして、胸が熱く甘い音を立て始める。
「うっ……うん!」
そう言いながらも震えるあたし。
恥ずかしくて下を向いていると、
「こっち見てよ、菜緒ちゃん」
樹君の声がする。
いつもの樹君なのに、甘くてあたしの心を滅茶苦茶にかき乱すような声だった。
真っ赤な顔を上げると、同じく頰を染めた樹君と視線がぶつかる。
そのままゆっくりと近付きあって……
甘い幸せな口付けを交わした。