飛べない鳥に、口づけを。







「菜緒ちゃん」




待ち合わせ場所に着くと、大好きな声に呼ばれた。

顔を紅潮させ、胸を高鳴らせ、あたしは声のするほうを見る。

すると、黒いコートにジーンズ姿の樹君が立っていて、さらに胸が熱くなった。

優しげで整った顔はもちろん、ふわっとした髪、落ち着いて大人らしい服装、コートの上からでも分かる鍛えられた肉体、その全てに狂わされる。

こうやって会っただけなのに、胸のときめきが止まらない。

樹君と一緒にいるだけで、あたしがあたしでなくなってしまいそうだ。

それほどまでに、樹君に夢中だ。


< 240 / 252 >

この作品をシェア

pagetop