飛べない鳥に、口づけを。





「ありがとう、樹君」




努めて平静を装うが、顔はにやけてしまう。

そんなあたしを笑顔のまま見て、樹君は言う。




「どういたしまして。

せっかく菜緒ちゃんが来てくれたんだから」




そして、その大きな手であたしの手をぎゅっと握った。




手を握られただけなのに、身体が震えてしまう。

ドキドキが激しくなる。

こんなに全身で樹君に焦がれているんだ。

触れるだけでおかしくなりそうなのに……

大丈夫なのだろうか。

あたしは樹君と「そんな関係」になれるのだろうか。


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