飛べない鳥に、口づけを。






アスールの写真に見惚れているあたしの耳の横で、



「菜緒ちゃん」



不意に名前を呼ばれて飛び上がりそうになる。

甘い吐息が耳にかかり、身体中の毛穴が収縮した。




狼狽えて、



「はははいっ!!」



不自然な返事をするあたしの身体に……後ろから優しく手を回される。

それだけでひっくり返ってしまいそうで、頭が真っ白になって、ピンッと背筋を伸ばした。




あたしの胸元に回された手は、血管が出て男らしい。

それがいちいちあたしの胸を刺激する。

駄目だ駄目だ、樹君の家に来たばかりなのに、いきなり動揺して挙動不審になって!



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