飛べない鳥に、口づけを。
「いっ、樹君!!」
思わず名前を呼んだら、
「菜緒ちゃん」
後ろから抱きしめられたまま、ふふっと笑われる。
そして、右手がそっと髪に触れ……
再び身体がゾワっとして、身体を強張らせると……
「ごみが付いてたよ」
樹君はそう言ってあたしの身体を離した。
その瞬間、崩れ落ちそうになるのを必死で我慢した。
振り返ると、いつもの笑顔の樹君がいて、ドキドキバクバクしているのは、あたしだけだと思い知る。
あたしのこじらせは、なかなか治らないのかもしれない。