飛べない鳥に、口づけを。





「いっ、樹君!!」



思わず名前を呼んだら、



「菜緒ちゃん」



後ろから抱きしめられたまま、ふふっと笑われる。

そして、右手がそっと髪に触れ……

再び身体がゾワっとして、身体を強張らせると……




「ごみが付いてたよ」




樹君はそう言ってあたしの身体を離した。

その瞬間、崩れ落ちそうになるのを必死で我慢した。

振り返ると、いつもの笑顔の樹君がいて、ドキドキバクバクしているのは、あたしだけだと思い知る。

あたしのこじらせは、なかなか治らないのかもしれない。


< 246 / 252 >

この作品をシェア

pagetop