飛べない鳥に、口づけを。
小沢さんの家は、いつもに増して散らかっていた。
介護用品に、空き缶に、薬に。
そして、畳の部屋に置かれているベッドに近付くと、
「あぁ……薬剤師さん……」
かすれた声が聞こえた。
そして、ギシッとベッドが音を立て、小沢さんが身体を動かす。
それでも起き上がることなんて出来ず、疲れた表情で目を閉じた。
「すみません、お休み中でしたね」
小沢さんと話をしながら、残薬を確認する。
ステロイドに、糖尿病の薬、高血圧の薬、そして骨粗鬆症の薬まで。
高齢で身体が不自由なうえ、薬までたくさん。
せめて、小沢さんの身の回りの世話をしてくれる人がいれば安心なのだが、
「息子が生きていればね……」
小沢さんはぽつりと言う。
「息子は親よりも先に逝っちまって、残ったのは孫だけだ。
私みたいな老いぼれが生きていて、息子が死んじまったなんて……」