飛べない鳥に、口づけを。
狼狽えるあたしに、矢沢さんは言う。
「川口。なんだ、樹さんって?」
その言葉にピンときた。
あたしはイケメンなんて嫌いだけど……イケメンアレルギーだけど……
矢沢さんはあたしが好きなんだ。
あたしが樹さんにぞっこんだから、妬いているんだ!
「やっ、矢沢さん!
あたしのことが、好きなんですね!」
思わずそう口にしたあたしに、
「川口、死ね」
顔を歪めて矢沢さんは言う。
そしてさっきの妄想は、あたしの自惚れだと思い知る。
矢沢さんは顔を歪めたままさらに毒を吐いた。
「俺はお前なんて好きじゃねえよ」