飛べない鳥に、口づけを。





必死で頭を回転させるあたしの耳に、



「ばあちゃん?」



新たな声が聞こえた。

落ち着いた男性の声だ。

女子校育ちのうえ、女子校のような薬学部出身のあたしには、男性に対する免疫がなくて、その声を聞いて飛び上がりそうになる。

そんなあたしとは違い、



「いっちゃん……」



小沢さんは嬉しそうに声を上げる。

皺だらけの頰が緩み、幸せそうな笑みを浮かべる。

その笑顔を見て、胸のしこりが少しだけ小さくなった。


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