飛べない鳥に、口づけを。





コツ……

コツ……



硬いものが床を叩くような音が聞こえ……

部屋の入り口に一人の男性が現れた。

陽に焼けた肌に、少し茶色の流れる髪。

細身だが、がっしりした身体に……松葉杖をついていた。

彼は少し驚いたようにあたしを見て、



「祖母がお世話になっています」



と軽く頭を下げる。

そんな男性に、



「こちらこそお世話になります。

ふたば薬局の川口です」



あたしは深々と頭を下げていた。




小沢さんの孫は、爽やかイケメンか。

そして、イケメンはあたしの最も苦手とする部類だ。

だが、仕事仕事と言い聞かす。

そんなあたしの心配なんて、必要なかった。


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