飛べない鳥に、口づけを。
樹君はすごいと思う。
選手生命を左右する大怪我なのに、そんなことを言えるなんて。
あたしなんて……男が苦手、イケメンが嫌い、そうやって逃げてばかりいた。
だけど、もう逃げたくない。
樹君をしっかり見据えて言う。
「あたしも、もう逃げません」
「うんうん」
樹君は嬉しそうに頷いて、
「敬語」
いちいち指摘をする。
……そう、敬語だってやめてやる!
樹君と本当の友達になって、いつかは振り向いてもらいたい。
もうこじらせ女は懲り懲りだ。