飛べない鳥に、口づけを。
樹君を思って胸を焦がすあたしを、
「いいか川口、自惚れんなよ」
矢沢さんが現実に突き戻す。
「相手は負傷中とはいえ、アスール屈指のミッドフィルダーだ。
お前みたいな面白みのない女に、興味なんてねぇよ」
言われなくても分かっている。
だが、言われるとさらに切なくなる。
昨夜はあんなにも前向きだったのに、既に挫折しかけていた。
だけど……
「みっどふぃるだぁ?」
矢沢さんの発した、意味不明の単語を繰り返す。
そんなあたしを見て、矢沢さんは大きなため息をついた。