飛べない鳥に、口づけを。
「川口、ちゃんと小沢樹の勉強しとけよ」
帰り際、やっぱりあたしをからかう矢沢さんを避け、家に急いだ。
矢沢さんに渡された、なんの変哲も無い紙袋を掴んで。
きっと、何かの冷やかしだろう。
エロ本でも入っているのか。
のんきにそんなことを考えながら家に入り、部屋の電気をつける。
ちらっと鏡を見ると、映っているのはいつも通りのあたしだ。
だが、今日のあたしは何だか明るい表情をしている。
これも全て、樹君のおかげだ。
鏡に向かってにっと笑ってから、何気なく矢沢さんの紙袋を開いた。
そしてあたしは、
「……ん?」
思わず声を出す。