飛べない鳥に、口づけを。





画面いっぱいに青色のユニフォームに身を包んだ樹君が映る。

その瞬間、「ひゃっ」と小さな声が出た。

そして、胸が熱く顔がにやけてしまう。

テレビに映っているのは、あたしの知っている樹君。

だが、少年のような笑顔はなく、口をきゅっと結んで遠くを見ている。

緊張しているようなその表情が、さらにあたしの胸をくすぐる。





もう終わった去年の試合なのに、心の中で樹君を応援した。


「頑張れ……頑張れ!!」


だけど、あたしの応援なんて必要ないほど樹君は凄くてかっこ良かったのだ。


< 94 / 252 >

この作品をシェア

pagetop