飛べない鳥に、口づけを。
解説を聞き、さらに樹君に心を動かしてしまう。
樹君は、同じ人間だとは思えない。
まるで手のように足を使い、涼しい顔でチームの攻撃の起点となる。
樹君を見ていると、いかに自分がちっぽけな人物かを思い知る。
テレビから溢れる小沢コールを聞きながら、やっぱり手の届かない存在かもしれないと再認識した。
だけど……
樹君は、あたしと友達になってくれた。
サッカー観戦だって一緒に行ってくれる。
それは紛れもない事実なのだ。
あたしの恋は実らないかもしれない。
だけど、このチャンスを無駄にしたくはないと思った。