飛べない鳥に、口づけを。






矢沢さんの言うことはもっともだが、元はと言えば矢沢さんが蒔いた種。




「くっ……口は悪いけど、矢沢さんはあたしを応援しているんでしょ?」



そう聞くと、



「ふざけんな、川口」



心底嫌そうな顔で睨みつけられた。

そして、



「おい、今のうちにこの処方箋の一包化しておけ。

もたもたすんじゃねぇよ」



なんて仕事を押し付けられた。

仕方なく本を置き、錠剤を集める。

そしてそれを処方箋通りに撒く。

薬を並べている間にも、気を許すと樹君のことばかり考えていた。




サッカーをする樹君、すごくかっこ良かったな。

時折見せるあの笑顔がたまらなかった。

もっとサッカーをする樹君が見たい。

かっこいい樹君を見たいんだ。



< 98 / 252 >

この作品をシェア

pagetop